「給料日なのに残高が…」の正体を突き止める
給料が振り込まれた朝のスマホ通知。口座残高を確認すると、なぜか想定より少ない。家賃も光熱費もまだ落ちていないのに――。そんな“ミステリー”を経験したことはないでしょうか。
理由の一つは、介護保険料。
「え、あれって 65 歳から払うものじゃないの?」と思うあなたにこそ、本稿を読んでほしいです。介護は、
- いま:40歳なると給料から毎月、介護保険料3,000 円程度が天引き開始
- 近い将来:親が転倒するだけで “月 4 万円” クラスの介護費用固定費が発生
- 老後:自分が 65 歳になったとき、年金の 4〜5%が年金から天引き開始
という“三段ロケット”で家計に食い込んでくるのです。
社会保険料に含まれる 3,000 円
会社員の源泉徴収票には「社会保険料等の金額」という欄しかありませんが、
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料(会社員、公務員のみ)
- 国民年金保険料
- 雇用保険料
などが合算されています。介護保険料は年々増加していて、40〜64 歳(第2号被保険者)の介護保険料は 全国平均で月 6,000 円前後(会社員などは会社が半分負担)。東京都心部なら 7,000 円台も珍しくないです。(65歳~(第1号被保険者)も同額水準で推移)

64歳までに120万円の出費
会社員の介護保険料の自己負担分は毎月3,000円程度(自営業は毎年6,000円程度)で、毎年だいたい年間1,000円ずつ増加(自営業は年間2,000円程度ずつ増加)しています。「毎月3,000円で年1,000円増加」という条件で40 歳~64歳の25 年間の自己負担分を計算すると単純計算で120万円(自営業は240万円)という計算になります。
「もし介護保険がなかったら」を想像してみる
介護サービスの“定価”はいくらか
- 訪問介護:およそ月5万円
- デイサービス:およそ 月15万円(1回1万円×月15回利用として計算)
- 特別養護老人ホーム:およそ月額 35万円(食費・居住費込み)
これらを 10 割自己負担 で払うことになる。平均的な世帯収入ではなかなかまかない切れない水準です。
保険があるから“1〜3割負担”で済む
公益財団法人生命保険文化センターによるサービス利用の具体例を参考にすると、それぞれの方の状況により異なりますが、月々の介護費用は30万円。介護期間は平均5年1カ月というデータがあるため、介護保険がない場合、月30万円の支払いを5年間も行わなければならない計算になります。それでは、介護保険が適用されると、自己負担額がいくらになるか計算してみましょう。介護保険の自己負担割合は1~3割で、介護サービスの利用者の所得によって異なります。
- 保険適用後の自己負担: 3〜9万円/月
- 介護保険が肩代わりしている部分:21~27 万円/月
つまり介護保険は、家庭が背負うはずだった年間 300万円前後、総額1,500万円前後(5年間)のコストを“公助”に置き換える仕組みといえます。
財源のしくみ
それでは介護保険制度のお金はどこから出されているのでしょうか。財源の構成を確認してみましょう。
介護保険給付の財源は半分が公費(税金)、半分が保険料(40歳以上の人が毎月負担)で、公費のうち半分(全体の25%)は国、公費の1/4(全体の12.5%)は都道府県、公費の1/4(全体の12.5%)は市町村が負担しています。
また、保険料部分に関しては、全体の27%が現役世代(40~64歳=第1号被保険者)、全体の23%が高齢者(65歳~=第2号被保険者)が負担しています。
| 財源 | 構成比 | 仕組み |
|---|---|---|
| 第1号(65歳以上)保険料 | 23 % | 年金から天引き (およそ月6,000円) |
| 第2号(40〜64歳)保険料 | 27 % | 会社員は給与天引き (およそ月3,000円) 自営業は国保税に上乗せ (およそ月6,000円) |
| 国庫 | 25 % | 消費税などの税収を充当 |
| 都道府県 | 12.5 % | 地方消費税・地方交付税 |
| 市町村 | 12.5 % | 住民税・地方消費税 |
介護保険給付費は年々増加していて、2024年度予算では介護保険給付費総額は13.2兆円となっています。

負担と恩恵のバランスをどう描くか
払わない自由は現行制度では選ぶことはできません。
しかし、「払う意味」を家計目線で腹落ちさせれば、保険料は“投げ銭”でなく“備え” になるともいえます。
折しも消費税減税が政治の大きなテーマとなっている中、介護を受けている人の視点、介護を将来受ける人の視点、介護を受けている親を持つ人の視点、介護を提供する人の視点など、様々な角度から負担と恩恵のバランスについて検討していく必要がありそうです。




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